ドイツワインレポート
モーゼル ラインを、店主まーちゃんがゆく・・


●2件目の蔵元 シュロス・リーザーへ
「シュロス・リーザー」のオーナー、トーマス・ハーグさんは、銘醸フリッツ・ ハーク家の長男。出発前に、輸入元からはトーマスさんのお父様(フリッツ・ハーク家当主ヴィルヘルム・ハーク氏)の写真が送られ、「この方ですので、ちゃんと顔を覚えておいて下さい」と念を押されたほどの実力者。ゴーミヨ(有名なレストランガイド)の「94ドイツワインガイド」ではドイツ最高の生産者に選ばれています。ちょっと緊張しながら車に乗り込みましたが、「今日は父はアメリカに行っています」とおっしゃる!「ふぅー」と緊張が解けました。とはいうものの、トーマス氏だって大物なんです。92年に「シュロス・リーザー」の醸造責任者として雇われ、数年後にはこのワイナリーを買い取っています。しかも、ジャーマン・ワイン・ガイドで4つ星を得ている数少ない若手の一人。でも、Tシャツにショートパンツ姿は、普通のお兄ちゃんでした。

トーマス ハーグ氏 車はまずまだ苗木が小さな畑へ。3年ほどで実は採れる(品質的にはまだまだだけれど、実際に実が採れるという意味)そうです。ここの畑もまたすごい急斜面。「すごく険しいですね。仕事は大変でしょう?」というと、「ここに生まれ育っていれば、そんなに険しいとも思わないよ。仕事も見た目より足場がしっかりしているのでそんなに滑らないし大丈夫。」とのこと。でも私だったらとてもじゃないけどこの急斜面で作業はできない!足をとられたら、斜面の一番下までころころと真っ逆さまに転がってしまいそうです。生えている雑草は一切除草剤を使わず、手で抜くそうです。この斜面の坂は、なかなかうまく撮れているので、皆さんにも険しさが良く解っていただけると思います。

●怒濤のティスティング 
トーマスハーグ氏ティスティング 続いて車はシュロス・リーザーへ。シンプルながらカントリー調にまとめられたテイスティングルームはかわいらしく、ペンションの一室のよう。「これが テイスティング・リスト」と渡された紙には、お父様のフリッツ・ハーク氏のワインが5本、ご自身のワインが8本、計13本ものワインが載っています。トーマス・ハーク氏は「自分の名前(シュロス・リーザー)が品質を物語っている、というつもりで造っている」ため、ニーダーベルク以外は全てグーツワイン(生産者名のみで、村名や畑名をつけないワイン)で出しています。

「QbAはわずかに加糖しています。たくさん加糖して人為的にアルコールをあげたものは長く寝かせられません。」「アルコールがそんなに高く無ければ2人で1本開けても飲み疲れないし、そういうのが良いワインです」「モーゼルワインは、瓶詰め3〜4年後に味わいや香りが休眠状態になってしまうこ とが多い。いつ飲むのがベストかを見極めて売っていかなければなりません」「ラ ベルには辛口や半辛口の表示はしません。法定より微妙に残糖を残したい時もあるから」「酵母は天然酵母のみです。畑の個性を出したいから培養酵母は使いません」等、トーマス氏流のこだわりの言葉が次々飛び出します。本当に真摯にワイン作りに取り組んでいるという事が感じられました。

同行していた主人は、透明感があるすっきりした、ハーク親子のワインがすっかり気に入り、「どのワインも素晴らしい。好みだ」と言っていました。それをトーマス氏に伝えるとにっこりと笑って嬉しそうでした。親子のワイン作りの手法は共通しており、土壌の違いだけが「違い」だそうで、なるほど、どのワインにも「飛び抜けたきれいさ、透明感」というものが共通しています。

テイスティングしているとまたお客様が来ました。若い女の子2人連れで、何と南アフリカから来たそうです。さすが有名生産者の名前は世界に響き渡っている!

  

 
シュロス リーザー
シュロス・リーザーの葡萄畑の表札。
実は、この表札は葡萄畑の道端に倒れていて、プレートも折れ曲がっていたものを、主人が手で曲げて直し、記念に撮影したものです。右端が波打っているのはその形跡です。


シュロスリーザー葡萄畑
どれだけ斜面が急か、この写真で伝わると思います。斜面の下に見える川がモーゼル川です。
他の地域、国のワインの生産に携わる人々が訪問した際、この斜面を見て「モーゼルワインを飲むのはいいが、働くのは遠慮したいね。」と言われるそうです。
この急斜面をも克服する労力が素晴らしいワインを産みだします。

ヴィリ シェーファー玄関 ●ヴィリ・シェーファー家のベランダはヒンメルライヒ(天国)だ!
そうこうしているうちに次の訪問蔵である「ヴィリ・シェーファー家」シェーファー氏がお迎えに来てくれました。シェーファー氏も私達に交わりシュロス・リーザーをテイスティングしたあと(モーゼルの生産者は皆、仲が良さそうです。)、車でまずベルンカステルの町に。(

ベルンカステルはモーゼル観光の中心になる小さな町。川沿いの道にはパラソルとベンチが置かれ、お年寄り達が飲み物を片手にくつろいでいるのどかな所です。石畳とドイツらしい木組みの家が並ぶ広場など少し町をぶらぶらと散策してみました。その短い間にも何人かがシェーファー氏に声をかけてきます。穏やかで気さくな彼の人気が伺えます。有名な「ベルンカステラー・ドクトール」の畑も見えました。この畑名は、トリアーの司教の病気がこの畑のワインで直ったということに由来しているのです。

ヴィリシェーファー夫妻 さて、シェーファー氏は今最も注目を浴びる生産者の一人。先日はニューヨークタイムズ紙のモーゼル特集でもJJプリュムに次ぐ評価を得ており、ワインのトレンド発信地のアメリカでの この高評価により、ただでさえ極端に少ない生産量の彼のワインが幻になるのは確実。

石畳の住宅街の中にシェーファー家はありました。ほがらかな奥様に迎えられてお宅にお邪魔します。天気がいいからバルコニーでテイスティングしようということになり2階に上がりました。お日さまいっぱいのバルコニーからはドームプロブストの畑が一望できる素晴らしい眺め。教会のとんがり屋根も見え、野鳥の声が響き渡っています。「気持ちいいですね〜。ここで良く食事もされるんですか?」と聞くと、「夏の間はこのバルコニーに住んでいるようなものですよ」とのお答え。うらやましい!

ワインはシェーファー氏の僅か2.6ヘクタールの畑、ヒンメルライヒ、ドムプロブストのQbA2000から順にランクを上げて行きます。「二つの畑の違いは何ですか?」と聞くと「畑はそんなに離れているわけでもないので、特に大きな差はないと思っています」とのこと。どこもそうですが、新ヴィンテージなのでフレッシュ感が違う。どこの蔵も共通して、「長期低温発酵」ということを言っており、これが、この清々しい香りとフレッシュ感の秘訣だそうです。こんなふうにお日さまの下で飲むのにはこれ以上おいしいワインはありません。私、正直言ってこの蔵では仕事なんか忘れていました。シェーファー夫妻の優しい笑顔、気持ちの良いヨーロッパの夏の日差し、そして今飲んでいるワインの葡萄畑が見える絵に書いたような美しい風景・・。この環境で個々のワインのレポートを書くなんて、ロボットじゃないとできないです(←なんて言い訳だ・・)

ところでシェーファー家は日本茶が大好きなんだそうで、毎日飲んでいるそうです。「良いワインをつくるため食べ物にも気を使い、刺激の強いコーヒーより日本茶を飲むようにしている」とのこと。 また、息子さんもワイン作りの勉強をしており、この夏からカリフォルニアの「サン・スーペリー」で実習するとのこと。「去年、サン・スーペリーに行きましたよ」というと、「どんなところ?」と身を乗り出して聞かれました。やっぱり有名生産者といえども人の親・・。ほほ笑ましかったです。

私の友達が結婚した時、職場の人にお祝いにアウスレーゼのワインをもらったそうです。とてもおいしかったそうで、私に電話を掛けてきて「ヴィリ・シェーファーって書いてあるけど、どんなワインなの?」と聞いてきました。その話をすると、シェーファー夫妻は本当に嬉しそうでした。

ヴィリシェーファー セラー●びっくりしちゃう地下セラー!
さて、テイスティングのあとは地下セラーに。玄関横の扉をあけると地下に階段が続いています。急にひんやりと寒くなりました。おや?シャトー・ラフィットの空瓶が・・。「年に1回くらい友達と一緒にいろんなワインを飲むんだよ」と少し照れくさそうに教えてくれました。ヨハン・ハールト家で見たのと同じ真っ黒な1000リットル樽。そして圧巻なのが古酒セラー。綿のようにふんわりとしたカビがボトルを覆っています。1920年代のものからあるとのことで、今でもたまに特別な時に開けるそうです。お父さんやおじいちゃんが造ったワインが今でも楽しめるなんて素晴らしいですよね!息子さんと娘さんの誕生年の分はごっそりとあってうらやましかったです。他の生産者が現代風なラベルに変えていくなか、ヴィリ・シェーファー家はずっと「お坊さんがワイングラスを持っている」という古典的なイメージのラベルを貫いています。

ヴィリ シェーファー葡萄畑 続いて車でドムプロブストの畑に向かいます。さすがに少し急斜面は見慣れてはきたものの、それでもさっきまでいた住宅地もモーゼル川もはるか下。「今はこの道路が出来たから楽になったけど、若い頃はこの道がなかったから何か忘れ物なんてしたら、また降りて上がって本当に大変だったよ。」・・そうでしょう・・。夏の暑い時期だったら倒れますよ、ほんとに。葡萄の枝を結わえてあるヒモはラフィアでした。「自然の素材が一番だよ」とおっしゃっていました。
  

長い一日がようやく終わります。シェーファーさんの車で今晩のホテルに送ってもらうことに。しかし・・「あっ、コンタクトの保存液買ってなかった!(前回書いたように香港の空港で置き忘れた)」と思い出し、恥を忍んでシェーファーさんに頼んで薬局まで連れていってもらいました・・。世界の有名生産者を足に使って買い物までしたのは私ぐらいでしょう・・。

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ヴィリ シェーファー看板
ヴィリ・シェーファー家の畑の標識。青い空と、ちょっとくたびれた標識に絡まる葡萄の枝、絵になります。


ハールト畑2
熱心に畑の説明をしてくれるシェーファー氏。写真では判りにくいかもしれませんが、いつも目元が微笑んでいるほんとに穏やかな方です。



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