南フランスローヌ&ラングドックを、店主まーちゃんがゆく...その1
●2002年8月26日(月) フランスに出発 エール・フランスで暑い関西空港を飛び立った飛行機は13時間でパリ シャルル・ド・ゴール空港に着陸。長旅ですが、今回は飛行機の中でぐっすりと眠れたせいか長さを感じず、元気いっぱい。だんなも暇つぶしをたくさん持込んでいたのであまりしんどさは感じていないようです。パリの気温は18度。大阪の気温の約半分! 地下鉄を乗り継ぎ、今日のホテルを取っているバスティーユへ。ちょっと一休みして晩ご飯を食べに出かけました。場所柄か通りは人も多くにぎやかなのですが、行けども行けどもフレンチレストランがありません。あるのはイタリアンやピザの店、コリアンバーベキューの店、和食、スペイン料理・・。一体ここはどこやねんっ?とつっこみを入れてしまうほどフレンチがないのです。仕方なくイタリアンの店に入りましたが、料理が出てくるまで40分かかった上に、御世辞にもおいしいとは言い難く、フランス到着1日目の洗礼を受けました・・。まあ、日本にも若者が集まる町に上品な和食の店はないので、こんなもんかもしれません・・。 ●8月27日(火) 翌日は道路清掃車の音で目が覚めました。フランスではパリに限らず道路清掃車が来るのですが、フランス中でこれをやめてみんながゴミを捨てないようにすれば、かなりの省エネと温暖化防止になるのにと思いました。フランスの喫煙マナーの悪さは日本以上。タバコを持った手で身振り手振り話すので、歩行中にやけどさせられそうになったこともありました。写真、後ろはローヌ川 さて、今日はフランスの新幹線TGVに乗ってアヴィニョンまで一気に南下。車窓からは、延々と牧草地が見えて白い牛が草を食べたり寝そべったりしていてのどかな光景が見えます。そしてところどころ花の終わったひまわりの畑も見えます。咲いている時期だったらどんなにきれいでしょうか?TGVの移動で楽しみだったことが、食堂車で風景を見ながら食事をすることでした。昨年のドイツ視察の時にも食堂車を満喫したので、今日も!と思いきや、なんとTGVには売店しかなかったんです。くすん。(ちゃんと乗る前に駅員にも聞いたのに・・。私が思う食堂車と、彼が思う食堂車には大きな隔たりがあったのね・・)仕方なく、「レンジでチン」みたいなグラタンもどきを食べました。でもこれが結構いけたってところがおちです・・。 TGVは約3時間でアヴィニョンへ。今回ワイナリーを案内してくれるのは、「イオス」の輸入元 山信商事の上田さん。半年前からフランス駐在員として何とジュヴレ・シャンベルタン村に住んでいらっしゃいます。村初の登録日本人居住者だそうで、「昨日の晩ごはんの材料で何を買ったか」ということが、翌朝には村中に知れ渡っている(笑)という有名人です。その上田さんとアヴィニョンの駅で待ちあわせました。 ●シャトー・シニャック ホテルに荷物を置いてちょっと休憩してから、まず1件目のワイナリーへ。車はアヴィニョンの城壁の横を通り、幹線道路にでました。左手にはローヌ川がゆったり流れています。その上を途中で切れているサン・ベネゼ橋(アヴィヨンの橋で 踊ろよ踊ろよ の歌の橋です)が見えます。 アヴィヨンから出ると、もう道路脇は延々と緑の葡萄畑が続きます。20分ほどでシャトー・ヌフ・デュ・パプ村を通過します。この村の名前は「法皇の新しい城」という意味。14世紀にローマ法王がこの村に居城を建て、まわりにワイン造りのために葡萄を植えたのが産地のはじまりです。山の上には、今は廃虚となった城の一部が見えます。その村からさらに走ったところにそのワイナリーはありました。 まずは畑の中に車を止めて、オーナーのピエールさんにご挨拶。ピエールさんはアメリカに住んでいたことがあるそうで、とても流ちょうな英語を話されます。畑は道を挟んで右と左ではかなり様子が違います。左側は背が低く、ぼさぼさの畑。右側はきれいに手入れされています。左側の方は、樹齢80年を越える古木の畑なのです。良く樹を見てみると、右側はまだひょっろっとした直径3〜5センチほどの樹が立ち並んでいるのですが、古木のほうは、ぐにゃぐにゃとねじ曲がり、こぶのようになっています。葡萄も右側は粒の揃った大きくてきれいな房が付いていますが、左側は粒も不ぞろいな上、少ししか房がついていません。ピエールさんによると、このシーズン限りでこの古木の畑は植え替えるそうです。今年の葡萄は、テーブルワイン用に回すとのこと。そう教えられると、役目を終えつつあるぼさぼさの葡萄樹たちはのんびりとくつろいでいるようにも見えます。この畑はすでに4年前から化学肥料を使用していないため、来年植えた葡萄はあと1年で有機栽培を名乗る資格ができるとのことです。(フランスでは5年以上化学肥料未使用でないと、有機と認められません。)畑は少しぬかるんでいました。2日前までかなりの雨が降っていたそうです。「雨の影響はないのですか?」と聞くと、「あと2〜3日もミストラルが吹けば大丈夫」というお答え。ミストラルというのは、このあたりを吹く強い風のことで、年間120日ほども吹くのです。そういえば、風が強いなあ、と思っていたのですが、「この日の風は大したことなかった」ことが後日わかるとは、このときの私は知らなかったのでした。 もう一度車に乗り込み、今度はワインセラーへ。体育館かと思うほどの、天井が高く広いセラーには、ワインが入った箱がうずたかく詰まれていました。AOCコート・デュ・ローヌの赤を、2001年、2000年と試してみると、基本的な味は似ているのですが、やはり2000年の方は落ち着いた味がしました。「テラ・アマタ」というワインは、この蔵の最上の畑からのワインです。 「愛されし土地」という意味のこの畑は、丘と丘に挟まれた南向きの谷になっていることでミクロクリマ(微小気候と訳されます。僅かな地形の変化による気候の違い)が生まれ、最上級の葡萄が出来るとのこと。確かに、濃い色調、がっしりとした骨組みと果実味の密さが感じられます。まだ若いため、舌にタンニンが降り積もったような荒さもありますが、数年後には素晴らしいワインになるでしょう。最後に、セラーの外で97年の「テラ・アマタ」を試しました。このワインが5年ものとは思えないほどの古酒の風味を醸し出していて、何とも不思議な感じでした。ピエールさんは、「このワインは吐き出せないね」と言って、全部飲んでいました。途中で、「スーパーマリオをいかつくしたようなおじさん」が日焼けした顔をほころばせながらやってきました。毛むくじゃらの太くて短い腕にはなんやら入れ墨が入っています。「うちのセラーマスターだよ」と紹介されたのには驚きました。だってワインを造っているより、漁船で網をひっぱってるほうがしっくりきそうな方だったからです・・。 さて、そろそろ夕方が近づきつつある頃(でももう20時近く)、今日の晩ご飯を食べるのにお薦めのレストランまで道案内してもらいピエールさんにお別れしました。 場所はシャトー・ヌフ・デュ・パプの山中の立派なレストラン。期待が大きかった分、けっこうヤラレました・・。昔ながらのフレンチとでもいうか、ほんとにソースも盛りつけも一品一品凝っているんですが、あまりに味が濃く、正直言って我々日本人の口には合いませんでした。でも、ワインリストはさすがにすごく、シャトー・ヌフ・デュ・パプが延々と続き、そのうち白に1ページを割いていました。(シャトー・ヌフ・デュ・パプの白はわずかしか生産がありません)。 ●2002年8月28日(水) ドメーヌ・ド・ギシャルド さて、今日は3件の蔵を回ります。まず1件目は、ドメーヌ・ド・ギシャール。昨日通ったシャトー・ヌフ・デュ・パプ村を過ぎ、さらに北上。山の中をちょっと迷いましたが、なんとか蔵に着きました。ここは、35haの畑を所有する家族経営のワイナリー。1980年から父親の仕事を引き継いだアルノー・ギシャールさんが、奥さんのイザベルさんと、収量を抑えたワイン造りを行っており、ロバート・パーカーの「ローヌワイン」で4つ星の評価を得ています。 ご挨拶のあと、早速畑を案内してもらいました。畑に続く道を歩いていると、すごい勢いで白くて大きな犬が横を走りすぎました。ここの看板犬?のオリーブちゃんがご主人に追いつき、こちらを見て嬉しそうに尻尾を振っています。広大な畑の中で放し飼いにされているためか、おおらかで人懐っこくとってもかわいい!こんなところで飼われる犬は幸せですね。 畑の中では、猪の足跡がついていました。良く出没して葡萄を食べてしまうそうです。また、30センチくらいの小さな蛇がいました。びっくりしましたが、健康で安全な畑の証拠でもあると思いました。 見せてもらった畑は、比較的若い樹が植えられていました。きれいに実った葡萄樹の畝の間には、わざと雑草を生やしているとのこと。若い樹は活発に活動し、必要以上に養分を蓄え過ぎるので、雑草と養分の吸収を争わせてコントロールするそうです。そういえば、去年行ったドイツの州営の実験畑でも畝の間に芝生を植えてデータを取っていたなあ。このブロックの葉は青々としているのですが、道を挟んで反対側の畑は、葉が黄色がかって少し枯れかかっているものもあります。この違いは、表面からは見えない、土壌の下部に違いがあるとのこと。フランスでは灌漑が禁止されています。表面は乾いているように見えていても土壌の下の方では水分を含んだ層があり、葡萄は土壌の下部の水分や養分を求めて根を下に下にと伸ばすのです。ところが、この反対側の畑は土壌が少し違い、途中に岩の層があるため水分を貯める力が前出の畑よりは少なく、同じ気象条件でもこのときのように少し枯れてしまうこともあるそうです。 たわわに実ったグルナッシを食べてみました。お日さまに温められた葡萄は、ぽってりとした甘さがあっておいし〜い!ワイン用の葡萄は食べても美味しくないと聞いたことがあったのですが、そんなことはないです。葡萄の粒はデラウェアをひとまわり大きくしたくらい。その大きさに対しては、皮は確かに厚いので、食用とはやはり違うとは思いました。次にシラーを食べてみると、こちらもとても甘いのですが、グルナッシュの甘さとはわずかに違いました。この微妙な差がワインになった時にも、(当たり前ですが)差になるんですね。 次にセラーを見学。温度管理できるステンレスタンクが7本立ち並び、タンクの上部に行ける安定した足場が造られています。タンクは1本1万リットル入るそうです!天井には、タンクの中で浮き上がってきた葡萄の皮を沈めるための機械が取り付けてあり、これは稼働式になっていて、順番に全てのタンクに使えるようになっていました。 次にテイスティング・ルームへ。 アルノーさんが見せてくれた写真には→上半身裸で葡萄を踏む男性が写っています。「97年まではこんなふうにしてたんだよ。」えっ〜?!そんな最近までこんな造り方してたのかあ・・。びっくり。この足踏み作業は、最初は葡萄の種が足に当たって痛いそうなのですが、しばらくやっていると葡萄が潰れて柔らかくなり非常に気持ちが良く、マッサージ効果が得られるため、やらせて欲しいという女性が多いそうです(笑)。 ワインは、AOCコート・デュ・ローヌの赤・白をいくつか飲みました。このワイナリーの特徴なのか、ローヌのイメージからするとどれもエレガント。力強いというタイプではなく、上品にまとまったタイプです。印象に残ったのは「シラー」とだけ書かれた非常にシンプルなラベルのもの。ローヌ北部のワインを思わせるような、酸のバランスがきれいにとれた1本でした。 ●ラ・バスティード・サン・ヴァンサン 今日2件目の訪問は「ラ・バスティード・サン・ヴァンサン」。道路沿いに立っているドメーヌの看板を曲がると、こんもりときれいに切りそろえられた木々があり、その奥にテイスティングルームと住まいがあります。小さなテーブルとイスが出してあって、入口には葡萄の蔦がからまり、センスの良さが感じられました。 写真がドメーヌ入口。かわいいでしょ? まだ30代であろうオーナーのギー・ダニエル氏が出迎えてくれました。彼はネゴシアンで働き、その後、小作人だった祖父が1980年代に創業したこのワイナリーを継ぎました。わずか20年でパーカー4つ星生産者となったのです。畑は6つの村に点在しますが、このドメーヌのまわりももちろん畑に取り囲まれています。 テイスティング・ルームには、いかにも南仏といったラベンダー畑などの風景の、素敵な写真がいっぱい飾られていました。この写真は、この蔵のワインメーカーが撮ったもので、彼はワインメーカーと写真家という二足のわらじを履いているそうです。なるほど、どことなくこの蔵に漂うスタイリッシュな感じは、アーティストでもある彼の影響があるのかも? まずはティスティングです。ここでは、ジゴンダス、ヴァケラス、コート・デュ・ローヌ、ヴァン・ド・ペイ・ヴォークリューズを造っています。この蔵で一番印象に残ったのが、「コート・デュ・ローヌ ロゼ」。ヴィンテージは確か01だったと思います。ワインコンクールで金賞を3つも獲得したもので、やや濃いめの赤よりのピンク色。果実味とコクのある辛口ロゼで、ブラインドで飲んだら軽めの赤と言ってしまうかもしれない非常に力強いワインです。これは脂ののった鴨の料理に合わせてみたいと思いました。赤だと旨味がタンニンで覆われてしまうような気がしますが、このぐらいの強さのロゼならきっとぴったりのはず! では畑とセラーを見に行きましょうということで、外に出たところ、入口の道沿いには白葡萄が植えられていました。ワイン用にも食用にもするシャスラでした。「食べてもいいですか?」と聞いたら、「取ってあげますよ」と言われて、?と思っていたら、ハサミと段ボールを持って出てきて摘んでくれるんです。ああ〜、味見だけでいいのに〜、と遠慮するのも構わず、ずっしりと重い段ボールいっぱいの葡萄をもらってしまいました・・。シャスラにマスカット、それにマスカット・ノワール。このマスカット・ノワールは、黒葡萄なんですが、食べるとちゃんとマスカットの味がするのでした。 車で5分ほど走って、セラーに着きました。手狭になったため新しく造ったというセラーの中は空っぽ。でも、セキュリティ・システムだけはしっかりと作動しています。何でもこのあたりは、フランスでも泥棒が多い場所らしいのですが、ワイン盗む泥棒っていうのもねえ・・(笑)。小さな中庭を挟んで、現在使用中のセラーを見せてもらいました。ここに限った話ではないんですが、ワイン蔵って、思うより道具が少ない。ボルドーなどに行けば樽がダッーと並んでいて圧巻なんでしょうが、ローヌではそれもなく、数個の樽が隅っこに控えめに並んでいるだけです。破砕機、醸造タンク、熟成タンク、圧搾機、フィルター、樽、パレット積されたボトル・・。ボトリング、ラベリングは専用の業者がやってくるそうで、この機械は高いうえに毎年機能が向上し、買うより借りる方が効率がいいそうです。ワインは大昔からあった飲み物でもあり、原理的には葡萄を潰しておけば造れるもので、単純と言えばそうかもしれません。でも、だからこそ、人の努力や工夫がてきめんに品質に現れるものなのだと思いました。 中庭で写真を撮っていると、お父さんがやって来られました。2人並ぶとやっぱり親子です、似てます。 さて、そしてセラー裏の畑へ。この日はミストラルがとても強くて、弱めの台風といった感じですが、葡萄も葉っぱも吹き飛ばされないのが偉いですね。この畑が面白いのは、畑の中の道を隔ててAOCが違うこと。ほんの3メートルほどの小道で、土壌が違うともましてや気候が違うとも全く思えないんですが、AOCっていうのは非情なものです。まあどこかで線引きがあるのは当然ながら、まさかこの程度の小道で分かれているなんて想像を絶していました・・。 |
大手スーパーのワイン売り場。ほとんどがネゴシアンものですが、とにかく量が多い!延々とフランスワインが続き、外国産ワインはエンドの方にまとめてこじんまりと置いてありました。 アヴィニョンの城壁。旧市街は全てこの壁に取り囲まれています。 こちらが古樹の畑です。ぼうぼうです。 古樹は芸術的とも言える幹です。 こちらが若樹の畑 きちんと行儀良く植わっています。奥の山は、このあたりで良くみられる石灰質の岩山。南アフリカのテーブルマウンテンのようですね。 古樹の実です。下の若樹の実と大きさを比べてみて下さい。 こちらが若樹の実。大きくて、実がはち切れそうにきれいになっています。 ご覧のとおり、このワイナリー以外な〜んにもないところです。「隣の家まで車で10分」の世界。 畑でのアルノー・ギシャール氏。足元に生えているこの雑草が養分の吸収を争い、樹勢をコントロールするそうです。 ぴかぴかに並んだタンク。1本1万リットル。 私の左側にあるのが、葡萄の皮を沈めるための機械です。 南仏らしく明るい雰囲気のテイスティングルームでの、ギー・ダニエル氏。 量より質。葡萄は間引いて、より凝縮感のある高い品質のものを作ります。今回訪問した蔵ではみんながやっていることです。落とした葡萄はそのまま畑の肥料になります。 この小道がAOCの境です。たったこれだけの違いとは拍子抜けしてしまいました・・。まあ、国境だって目にみえないんですから当たり前かもしれませんが。 これが頂いた葡萄です。でかい!重い! |
ワインの通販 佐野屋 happywine.com
Copyright 1996 kurabisyu inc.